
2026年10月15日に、日本で「ZW3D WuKong 2027」が発売されました。寸法や条件を変更すると形状を再計算する「パラメトリックモデリング」の基盤であるカーネルが刷新されています。メーカーの発表では、設計変更時の再生成性能や安定性、大規模アセンブリ、図面の関連更新などが主な改善点として挙げられています。新しいコマンドが増えただけでなく、日常的に繰り返す「作る・変更する・更新する」という作業を支える部分にも手が加えられています。

製品名に加わった「WuKong(ウーコン)」は、漢字で書くと「悟空」です。中国の公式サイトでも「中望3D 悟空2027」と表記されています。日本でもおなじみの『西遊記』の孫悟空を連想する名前です。
名前の背景を調べると、ZWSOFTが以前から進めてきた「悟空計画」という開発プロジェクトに行き着きます。南方網に掲載された同社幹部・劉玉峰氏のインタビューでは、高度な3D CADプラットフォームを開発するこの計画を、会長が『西遊記』の一節にちなんで「悟空計画」と名づけたと説明されています。
その一節が「鸿蒙初辟原无姓,打破顽空须悟空」です。難しい表現ですが、CAD開発の背景と重ねると、技術の壁を打ち破り、新しい領域を切り開こうとする姿勢を感じさせます。これは私なりの受け止め方ですが、モデリングの基盤を刷新した今回のバージョンを理解するうえでも、興味深い背景です。
ZW3D WuKong 2027は、何が変わった?
ZW3Dは、3Dモデルを作成するCAD、解析を行うCAE、加工データを作成するCAMを扱う統合型のソフトウェアです。※利用できる機能は、導入するパッケージやオプションによって異なります。
今回の「WuKong 2027」で注目したいのは、CADの中核である「カーネル」からモデリング基盤が見直されている点です。ZWSOFT Japanは、カーネルを進化させ、次世代パラメトリックモデリング基盤へ刷新したと発表しています。
カーネルは、CADの内部で3D形状の計算や処理を担う中核部分です。一方、パラメトリックモデリングの基盤は、寸法・拘束・作成履歴などの関係を管理し、設計変更に応じてモデルを再生成する仕組みに関わります。両者は密接に関係しますが、同じ意味の言葉ではありません。
今回の進化は、カーネルを含むモデリング基盤の強化として捉えると分かりやすいです。メーカーは、その成果として設計変更時の再生成性能や安定性、大規模アセンブリ、図面の関連更新などの改善を挙げています。
メーカーは、特定の試験条件で従来世代比最大5倍の再生成速度を案内しています。これはすべてのモデルで同じ効果が出るという意味ではありませんが、長い履歴を持つ部品や、変更の多い設計で注目したい改善です。大規模アセンブリの処理や、設計変更に伴う関連更新の信頼性も強化されています。
注目したい!2027の新機能・機能強化
複数箇所の丸みをまとめて作る「自動フィレット」を追加
フィレットは、部品の角や面のつなぎ目に丸みをつける処理です。新機能の自動フィレットでは、複数のエッジへの丸みづけをまとめて行えます。凸側と凹側に異なる半径を設定でき、処理対象から外すエッジや面も指定できます。鋳物や樹脂部品など、丸みをつける箇所が多い形状での繰り返し操作を減らす機能です。

ルールに基づく「自動製図」を強化
3Dモデルから2D図面を作成する自動製図が強化されています。あらかじめ決めた製図ルールを適用することで、社内やプロジェクトの基準に沿った図面の作成を支援します。メーカーは、特定の試験条件で図面作成時間を最大80%削減できると案内しています。数値はメーカー公表値で、モデルやルールの設定などにより効果は変わります。


スケッチ拘束と、スケッチを始める操作を改善
スケッチでは、選択した線や点などに応じて、適切な拘束タイプを自動判断するよう操作が改善されています。拘束とは、水平・鉛直・一致など、図形の位置関係を決める条件のことです。寸法コマンドの実行中に既存寸法を編集できる点も改善されています。

また、平面を選んで押出しや回転を開始すると、そのままスケッチモードへ移行できるようになりました。日々何度も行う操作を簡略化する変更です。
全体のレイアウトを基準にしたトップダウン設計を強化
アセンブリでは、マスタレイアウトを使うトップダウン設計が強化されています。他の部品を参照しながら、基準要素やスケッチ、押出しなどを作成できます。トップダウン設計は、製品全体の配置や部品同士の関係から、個々の部品を設計する進め方です。例えば、装置全体の配置に合わせて取付部品を設計するような場面で、活用を考えられそうです。

複数のリブに抜き勾配をまとめて設定
抜き勾配の固定チェーンでは、線や曲線を基準として、複数のリブに抜き勾配をまとめて設定する機能です。抜き勾配とは、鋳造品や樹脂成形品を型から取り出しやすくするための傾斜です。補強用のリブが多い部品で、繰り返し操作の削減を狙える機能として紹介されています。

板金部品をつなぐ・まとめる・丸める機能を追加
板金設計では、次のような機能が追加・強化されています。
- ジョイントフランジ:離れた板金形状をつなぎ、ひとつのモデルにする。
- フランジマージ:展開・折り曲げを維持しながら、別々の板金ボディをまとめる。
- 板金フィレット:展開形状で余分なエッジの発生を避け、切断工程で扱いやすい輪郭を作成。
- スプラインエッジへのフランジ作成:曲線のエッジに沿ったフランジ作成に対応する。
板金は完成形だけでなく、展開後の形状も重要です。今回の改善は、立体形状と加工用の展開形状をつなぐ作業にも関わっています。

断面ビューでの測定とPMIに対応
断面ビュー上で、断面積やすき間、主要な寸法を測定し、PMIを付加できるようになっています。PMIは、寸法や公差などの製造情報を3Dモデルに付ける仕組みです。内部の寸法やすき間を、断面を見ながら確認する用途に役立ちそうです。

図面の投影処理
図面では、自動製図に加えて、3D形状を2Dへ投影する処理も最適化されています。

CAM機能も改善
CAMでは、3軸加工に「面取りバリ取り」「プロファイル」の加工オペレーションが加わり、等高線加工や領域加工の工具経路間隔の制御も改善されています。設計だけでなく、加工準備側にも更新があることが分かります。

実体験!自動フィレットと自動製図
自動フィレット
自動フィレットでは、シェープ(形状)を選択して、凸と凹とで半径のサイズを変更できました。

自動製図
自動製図の機能を試してみましたが、パーフェクトにはいかないですね。全部の寸法が追加されるので、複雑な形状だと寸法だらけになります。これは、仕方がないですかね。


シンプルな部品形状であれば、使うことで作業効率がアップするかもしれません。

YouTube動画
自動フィレットと自動製図について、YouTubeに動画で公開しています。ぜひ、ご覧ください。
おわりに
今回は、ZW3D WuKong 2027の名前の背景と、カーネルの進化をはじめとする新機能・機能強化を紹介したうえで、自動フィレット、自動製図を実際に試した内容をお伝えしました。
これからも実際に操作しながら、設計やものづくり教育にどのように活用できるかを探っていきたいと思います!