サイズが少し違う製品をつくるたびに、寸法を変更し、部品を選び直し、図面の情報を更新する。3D CADを使っていると、こうした繰り返し作業が発生することがあります。
前回は、SOLIDWORKSと組み合わせて使うDriveWorksについて調べました。では、Autodesk Inventorでは、同じような自動化ができるのでしょうか。

そこで今回は、Autodesk Inventorの「iLogic」に注目して、何ができるのか、どのような仕組みなのかを調べてみました。寸法変更だけでなく、入力画面、Excelとの連携、図面の処理などにも活用できるようです。
この記事は、Autodeskなどの公式情報をもとにまとめた調査記事です。実際にiLogicで仕組みを構築して検証した操作レビューではありません。 機能として紹介されている内容と、そこから私が考えたことを分けてお伝えします。
※情報確認日:2026年10月1日。基本機能の説明にはInventor 2026の日本語ヘルプを参照し、Inventor 2027で追加された機能は別に紹介します。
iLogicとは?設計の条件をルールにする機能
iLogicは、Inventorに組み込まれている、ルールに基づいて設計を自動化する機能です。元になるモデルや図面に対して、寸法、フィーチャー、部品、属性情報などを、条件や計算式によって変更できます。

例えば、収納棚の外幅から左右の板厚を引いて棚板の長さを決める、扉の種類に応じて部品を切り替える、といった考え方です。こうした判断を登録しておけば、仕様が変わるたびに同じ操作を繰り返す作業を減らせる可能性があります。
iLogicそのものは、Inventorとは別に購入する独立したCAD製品ではありません。Inventor内の機能として利用するため、Inventorの利用環境が前提になります。

公式ヘルプでは、ルールを小さなVB.NETプログラムとして説明しています。VB.NETはプログラミング言語の1つです。ただし、定型的な処理を助ける機能やコード例も用意されており、すべてをゼロから書き始める必要があるわけではありません。
参考:Autodesk公式:iLogicのルールおよびフォームの概要
仕組みは「パラメータ・ルール・フォーム」で考えると分かりやすい
最初に、iLogicの基本となる3つの要素を整理してみます。
| 要素 | 役割 | 収納棚で考えた例 |
|---|---|---|
| パラメータ | 寸法や仕様を表す値 | 幅、高さ、板厚、扉の種類、補強の有無 |
| ルール | 値をどう計算し、何を変更するかを決める | 棚板の長さを計算する、条件で部品を切り替える |
| フォーム | 使う人が仕様を入力する画面 | 寸法入力欄、仕様の選択欄、実行ボタン |
パラメータは数値だけではなく、文字列、真/偽、選択肢を持つ値なども扱えます。そのため、「幅は600mm」「扉の種類は片開き」「補強を付ける」といった情報を、設計の判断へ結び付けられます。
また、フォームは、パラメータやプロパティ、ルールをドラッグ&ドロップして組み立てることができます。単純なパラメータ入力用フォームなら、フォームを作るためにルールを書く必要はありません。
ここは区別しておきたい点です。「フォームをプログラミングなしで作れる」ことと、「あらゆる自動化処理をコードなしで実現できる」ことは同じではありません。入力された情報から何をするかは、目的に応じてルールを用意します。

できること① 寸法やフィーチャーを条件で変更する
iLogicでは、入力された仕様やモデルの状態に応じて、パラメータやフィーチャーを制御できます。フィーチャーは、穴や押し出しなど、形状を構成する要素です。
例えば、製品の種類に応じて寸法を変更する、オプションを選んだときだけ必要な形状を有効にする、といった仕組みが考えられます。材料や外観の情報を変更したり、入力範囲を制限したり、条件に合わない入力にメッセージを出したりすることも可能です。
こうしたルールには、「なぜこの寸法なのか」「どこまで変更できるのか」という設計の考え方が含まれます。自動化を進める際は、操作を置き換えるだけでなく、成立する条件や例外を整理することが大切だと感じます。
できること② 部品やアセンブリの構成を切り替える
製品の仕様が変わると、使う部品や組み合わせが変わることもあります。iLogicは、アセンブリ内のコンポーネントの置き換えや、構成の変更にも利用できます。
例えば、取っ手の種類を選択して別の部品へ置き換える、オプションに応じて部品を省略する、用意した部品・アセンブリのバリエーションを条件で選ぶ、といった活用が考えられます。
ただし、置き換える部品や、組み立てるための拘束が正しく用意されていることが前提です。条件を変えたときに、干渉や参照エラーが発生しないかも確認する必要があります。
単純に外形を拡大・縮小するだけでなく、「製品としてどの部品を選ぶか」を仕組みにできる点は、設計自動化の面白いところだと思います。
参考:Autodesk公式ブログ:Getting Started with iLogic in Inventor
できること③ Excelの情報を読み書きする
公式ヘルプには、Excelの表やセルを読み書きするための「GoExcel」などの関数が紹介されています。
例えば、標準寸法の一覧から該当する値を読み取る、部品番号や材料情報を参照する、計算した結果を指定したセルへ書き込む、といった仕組みを構築できます。部品表をExcelなどへ出力するための関数も案内されています。
ものづくりの現場には、Excelで管理している情報が多くあります。その情報をCADのルールと結び付けられることは、活用の入口になりそうです。
ただし、「Excelを使っているだけで、CADと常に自動同期される」という意味ではありません。どのファイルのどの項目を、いつ読み書きするかを設定します。ファイルの場所、シート名、データ型、更新手順なども合わせて考える必要があります。
また、処理内容によって、iLogicの内部ExcelエンジンとMicrosoft ExcelのCOM連携などの違いがあります。Excelのインストール要否などは、行いたい処理と利用環境に合わせて確認する必要があります。
参考:公式ヘルプ:Excelデータのリンク関数/iLogicオプションの設定
できること④ 図面や属性情報の処理を自動化する
モデルの形状変更だけでなく、図面や設計情報の更新にも活用できます。
例えば、図面の表題欄に使う情報を更新する、図面ビューを作成・配置する、寸法やバルーン、部品表を追加・調整する、といった処理です。Autodesk Universityでは、iLogicとInventor APIを利用した図面自動化の解説が公開されています。
APIは、ソフトウェアの機能をプログラムから呼び出すための仕組みです。iLogicの用意された機能に加え、Inventor APIを使うことで、より細かな処理へ広げられます。
ここで気を付けたいのは、「図面を自動化できる」という表現の範囲です。どんなモデルにも、自動で最適な寸法や見やすい配置を判断してくれるという意味ではありません。元になるモデル、図面テンプレート、参照する形状、配置のルールなどを準備する必要があります。
また、PDFやDXFなどの出力処理も自動化の対象になります。自分たちが毎回行っている、図面作成後の保存や形式変換まで整理すると、対象を見つけやすそうです。
参考:Autodesk University:図面自動化の解説/Autodesk Support:IDWからPDF・DXFへの自動出力
できること⑤ 保存や変更をきっかけにルールを実行する
ルールを実行する方法は、毎回ボタンを押すだけではありません。「イベントトリガ」を設定し、特定の出来事をきっかけに実行することもできます。
公式ヘルプには、ドキュメントを開いた後、保存前、モデルパラメータの変更、材料の変更、図面ビューの変更などのイベントが紹介されています。
例えば、保存前に必要な属性情報を整える、材料が変わったときに関連する情報を確認する、といった処理を考えられます。ただし、利用できるイベントや動作条件は、部品・アセンブリ・図面などで異なります。
iLogicのイベントによる実行と、サーバーなどで多数の処理を無人運用する仕組みは、分けて考える必要があります。「保存時にルールが動く」ことだけで、Web受注から製造データ生成までの運用基盤が完成するわけではありません。
Inventor 2027では「コードブロック」が追加されている
今回調べて、もう一つ興味を持ったのが、Inventor 2027の「コードブロック(Codeblocks)」です。

Autodeskの公式発表では、パラメータ、条件、処理などのブロックをドラッグ&ドロップして組み合わせ、自動化のロジックを構築できる機能として紹介されています。生成されるコードも確認でき、従来のテキストで書くルールとは別の入口になります。
「条件に応じて処理を変える」という考え方を、目で見ながら組み立てられる点は、学習にも役立ちそうです。ただし、ブロックで作れる範囲と、VB.NETやAPIを使った高度な処理の範囲は同じではありません。公式サポートも、コードブロックがすべてのスクリプト・API機能をサポートしているわけではないと案内しています。
また、公式の新機能ヘルプでは、ブロックのルールをテキストへ変換できる一方、テキストのルールをブロックへ戻すことはできないと説明されています。
従来のiLogicはVB.NETのルールが基本です。そのうえで、2027ではブロックによる作成方法が加わった、と理解するとよさそうです。旧バージョン向けの動画を見る場合は、この違いにも注意したいところです。
参考:Autodesk日本公式:Inventor 2027発表/2027公式ヘルプ:iLogic Enhancements/Codeblocksの機能範囲に関する公式案内
DriveWorksと似ている点、異なる点
iLogicとDriveWorksには、「設計の知識をルールにし、仕様違いの作成を自動化する」という共通点があります。ただし、製品の構成や、仕組みを作る方法は異なります。
| 比較項目 | InventorのiLogic | SOLIDWORKSのDriveWorks |
|---|---|---|
| 対象CAD | Autodesk Inventor | SOLIDWORKS |
| 提供形態 | Inventorに組み込まれた機能 | Xpressは無料付属、Solo・Proは有料製品 |
| 自動化の基本 | パラメータ、フォーム、ルールを組み合わせる | 入力フォーム、取り込んだ設計項目、ルールを結び付ける |
| 処理を作る方法 | VB.NET、用意された関数・スニペット、必要に応じてAPI。2027ではコードブロックも利用可能 | 製品別のフォーム・ルール・出力設定を利用。Proでは拡張機能も利用可能 |
| 図面・文書への展開 | ルールやAPIで必要な処理を構築する | Solo・Proに図面の詳細制御や文書作成機能が用意されている |
| Webでの仕様選択・CPQ | iLogic単体を、完成したWeb販売・見積り基盤として扱うものではない。別の仕組みや開発を検討 | Proのモジュール構成でWeb仕様選択やCPQへ展開可能 |
※機能数や性能の優劣を判定する表ではなく、仕組みの位置付けを整理したものです。
例えば、iLogicでもExcelや外部アプリケーションを利用して、見積りに必要な情報を作る処理を構築できます。一方、それを営業担当者や顧客に使ってもらうためには、入力画面、価格データ、承認、アクセス権、処理の実行環境などを別途設計する必要があります。
そのため、「iLogicはDriveWorks Proの全機能と同じ」「iLogicは無料だから、Proの代わりになる」と単純には言えません。すでに利用しているCADと、自動化したい範囲、運用する担当者や環境を合わせて考えることが大切です。

参考:iLogicの機能の概要/DriveWorks公式比較
活用例を考えてみる:サイズ違いの収納棚
ここまでの機能を、収納棚の設計に当てはめて考えてみます。これは説明用の仮想例で、実際に作成・検証したものではありません。
まず、フォームで幅・高さ・奥行き、扉や取っ手の種類を選びます。ルールで棚板や側板の寸法を計算し、必要に応じて部品やフィーチャーを切り替えます。
次に、品番や材料などの情報をモデルへ反映し、用意した図面テンプレートと処理ルールを使って、図面や部品表を更新します。さらに必要であれば、Excelへ情報を書き込んだり、図面を指定形式で出力したりする流れへ広げられます。
ただし、最初から全工程を自動化しようとすると、準備する内容が多くなります。まずは寸法変更、次にオプションの切り替え、その次に図面や出力処理、と段階的に進める方が、問題点を見つけやすいと考えます。
特に、最小寸法、最大寸法、部品数が変わる条件などを確認し、どの範囲で正しく動くかを把握しておきたいところです。
参考になる公式サイトと動画
最初に概要を知るなら、日本語の公式ヘルプが参考になります。フォーム、Excel、イベントなど、気になる機能から読み進められます。
操作画面の参考には、次の公式動画チュートリアルがあります。
Set iLogic rules in Inventor
ホイールのアセンブリを題材に、iLogicのルールを編集して仕様を変更する、約5分のチュートリアルです。画面と説明のトランスクリプト、教材データが掲載されています。
図面の自動化まで知りたい場合には、次のAutodesk Universityの解説も参考になります。
Taking It to the Next Level: Drawing Automation with Autodesk Inventor
こちらは2020年の内容です。考え方を学ぶ参考として利用し、現在の画面やAPIの仕様は使用するバージョンの情報と照らし合わせてください。
調べて感じたこと:設計の理由を説明する練習にもなる
今回調べて、私が興味を持ったのは、iLogicが「設計の判断を整理する」取り組みにつながることです。
寸法を変更する操作は分かっていても、「その寸法が変わったら、他も変更するのか」「どの条件で部品を切り替えるのか」を言葉にするのは、意外と難しい場合があります。
ルールを作ろうとすると、その理由を明確にする必要があります。CAD教育の視点でも、形状を作る練習から一歩進んで、設計の条件や意図を説明する練習につながりそうです。
また、2027のCodeblocksによって、条件と処理を視覚的に整理する入口も広がっています。これは実際の教育効果を検証した結論ではありませんが、初心者が設計自動化の考え方に触れる方法として、今後確認していきたいと感じました。
おわりに
InventorのiLogicは、寸法や形状の変更、部品構成の切り替え、フォームによる仕様入力、Excelとの読み書き、図面や出力処理などへ活用できる、ルールによる自動化機能です。

DriveWorksと共通する考え方を持ちながら、Inventor内のルールやAPIを使って処理を組み立てるという特徴があります。Inventor 2027ではCodeblocksも追加され、ルールを作る入口が広がっています。
まずは、自分が毎回繰り返している小さな作業を一つ選び、「どの値を使い、どの条件で、何を変更しているのか」を整理することから始めるとよさそうです。
3D CADで形をつくることに加え、設計の知識を繰り返し使える仕組みにする。iLogicも、ものづくりの仕事と教育の両面から注目していきたい機能です。