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ZW3Dで線形静解析を試してみた!解析エンジンと買収から広がるCAD・CAEのつながり

2026年10月15日に、日本で「ZW3D WuKong 2027」が発売されました。

ZW3D WuKong 2027 カーネルの進化と新機能紹介
2026年10月15日に、日本で「ZW3D WuKong 2027」が発売されました。寸法や条件を変更すると形状を再計算する「パラメトリックモデリング」の基盤であるカーネルが刷新されています。メーカーの発表では、設計変更時の再生成性能や安定…

今回、ZW3D WuKong 2027のトライアル環境で、中央に穴のあるプレートの「線形静解析」を試してみました。線形静解析では、CADで作った形状に力が加わった際に、どのように変形し、どこに応力が集中するのかを確認できます。

解析を試すと、その内部で何が計算をしているのかも気になります。そこでこの記事では、まず解析エンジンの役割と、ZWSOFTが解析機能を拡充してきた経緯を調べ、その後に実際の解析画面を紹介します。構造解析の研究開発に加え、VXのCAD/CAM技術取得、CHAM買収とPHOENICSの熱流体解析技術についても整理します。

ZW3Dのシミュレーションは、どんな技術で動いている?

シミュレーション機能の背景を理解するために、形状処理、構造解析、熱流体解析の役割と経緯を順に見ていきます。

形状を扱う「カーネル」と、物理現象を計算する「ソルバー」

ZW3Dが採用している「Overdrive」は、3D形状の作成や編集を担うモデリングカーネルです。一方、力を加えたときの変形や応力などを計算する解析エンジンは「ソルバー」と呼ばれます。形状を処理する機能と、物理現象を計算する機能には、それぞれ役割があります。

構造解析では、一般に次の流れで計算を進めます。

  1. 前処理:形状を準備し、材料・固定条件・荷重を設定して、メッシュを作る。
  2. ソルバーによる計算:設定した条件のもとで、変位や応力などを求める。
  3. 後処理:結果を色分け表示や数値、アニメーションなどで確認する。

ZWSOFTには、この前後処理を担い、各種ソルバーを統合するための「ZWMeshWorks」というCAEプラットフォームもあります。公式資料では、Overdriveによる形状処理、メッシュ生成、前後処理を組み合わせる仕組みが説明されていました。

参考:ZWMeshWorksの公式解説(英語)

構造解析は、有限要素法を使う技術

ZWSOFTの構造解析製品「ZWSim Structural」は、有限要素法(FEM)を用いた解析ソフトウェアです。モデルを小さな要素に分け、材料や荷重、拘束条件などに基づいて構造の挙動を計算します。

同社は構造解析のソルバー技術を研究開発しており、2022版の公式発表では、自社開発の反復法ソルバーや固有値ソルバーなどの技術を紹介しています。反復法は計算を繰り返して解を求める方式、固有値ソルバーは固有振動数などの計算に関係する仕組みです。

また、ZW3Dの内部で構造解析を行う「ZW3D Structural」は、ZW3D 2023の公式発表で新しいアドオンとして紹介されています。現在の日本公式ページでは、線形・非線形静解析、固有値解析、熱解析、動解析などが案内されています。

ただし、基本の解析機能と追加の構造解析アドオンでは、利用できる範囲が異なります。今回私が使用したトライアル環境について、内部ソルバーの個別名称やバージョンまでは確認できていないため、ここではメーカーが公表している技術と製品の位置づけを紹介しています。

参考:構造解析技術を含む2022版の発表(中国語)/ZW3D 2023の発表(英語)/ZW3D Structural日本公式

なぜCADに解析機能を組み込むのか?

背景にあるのは、設計・解析・加工をつなぐ「All-in-One CAx」というZWSOFTの方針です。CADで設計した形状を、CAEで検証し、CAMで加工準備につなげていく考え方です。

同社は2018年にCAEの研究開発拠点を設立し、2020年にはZWSim Structural、ZWSim-EM、ZWMeshWorksからなるCAE製品群を正式に発表しています。構造解析の取り組みは、後述するCHAM買収より前から進められていました。

CADと解析を同じ環境で扱えると、設計した形状を解析に使いやすくなります。例えば、板厚を変えたときに変形がどう変わるか、穴の位置を変えると応力の分布がどう変わるかを、設計段階で比較する使い方が考えられます。実物を作る前に問題を探り、手戻りを減らすための環境づくりと捉えると、解析機能を組み込む狙いが分かりやすいと思います。

参考:CAE研究開発の経緯(英語)/ZWSOFTの沿革(英語)

買収の経緯①:VXのCAD/CAM技術が3Dの基盤に

ZWSOFTは2010年に、米国VX CorporationのCAD/CAM技術と中核の研究開発チームを取得しました。Overdriveの公式解説でも、この技術取得の経緯が説明されています。

これは、ZW3Dや関連製品の形状処理を支える技術の背景です。「物理現象を計算する解析ソルバーそのものの買収」とは役割を分けて理解する必要があります。

参考:Overdriveの公式解説

買収の経緯②:CHAMとPHOENICSで熱流体解析を拡充

解析分野の買収として注目したいのが、2023年10月に発表された英国CHAM社の買収です。CHAMは、流れや熱の移動を計算するCFD(数値流体力学)ソフトウェア「PHOENICS」の開発元です。

買収発表によると、ZWSOFTはPHOENICSのソースコードと中核技術を取得し、英国・日本のチームも加わることになりました。狙いは、構造・電磁・流体を含む解析製品群を拡充することです。

日本で発表された「ZWPHOENICS」は、従来のPHOENICSにZW3Dのモデリング機能を統合した製品です。ここでは、PHOENICSの熱流体解析技術と、ZW3Dの形状作成技術を結びつける展開が見られます。

今回の私が試した穴付きプレートの線形静解析は、力による変形や応力を見る構造解析です。PHOENICSは流れや熱を扱う解析技術なので、「CHAMを買収したことで今回の線形静解析が搭載された」と説明するのは適切ではありません。構造解析の開発と、CHAM買収による熱流体解析の拡充を分けて考えます。

こうした経緯を見ると、ZW3Dのシミュレーションは、形状処理の技術、構造解析などの研究開発、買収による熱流体解析技術の取得を組み合わせて広がってきたと整理できます。

参考:CHAM買収の公式発表(英語)/ZWPHOENICSの日本公式発表

線形静解析で、穴の周りの応力を確認

ここからは、私が実際に試した線形静解析の紹介です。使用したのはZW3D WuKong 2027のトライアル環境ですが、線形静解析自体を2027で初めて追加された新機能として紹介するものではありません。

線形静解析は、時間による変化を考えない荷重に対して、材料が線形弾性の範囲で変形し、変形も小さいといった前提のもとで、応力や変位などを求める解析です。ZW3Dでは、線形静解析以外にも様々な解析が行える機能が搭載されていますが、今回は線形静解析を行ってみました。

材料には「Aluminum(アルミニウム)」を指定しました。材料の指定は、形状に加えて、変形のしやすさなどの物性を計算に反映するための設定です。次に、プレートの片側に固定拘束を設定し、反対側に力荷重を設定しました。拘束は「どこを、どのように支えるか」、荷重は「どこに、どの方向へ、どれだけの力を加えるか」を決める条件です。拘束は緑色、荷重は赤色の矢印で表示されました。

今回使用したのは、六面体メッシュです。メッシュとは、計算のために形状を小さな要素に分割したものです。六面体要素は、変形した直方体のような、6つの面を持つ立体の要素です。サイコロをイメージしてもらえればと思います。

設計者向けCAEでは、四面体要素を使うものが多いですが、ZW3Dでは、四面体メッシュと六面体メッシュの両方を使い分けることができました。表面に四角形が並ぶだけの2次元メッシュとは異なり、今回は体積を持つ3次元の六面体要素でプレートを分割しています。穴の周囲にも形状に沿ってメッシュが配置されていることが分かります。

六面体だから必ず高精度になる、というわけではありませんが、一般的に六面体の方が高精度に解析を行うことができます。ただし、結果の精度を考えるには、要素の次数、形のゆがみ、厚み方向の分割数、応力が変化する箇所の細かさなども関係します。要素の形だけで優劣を決めず、対象の形状や解析目的に合ったメッシュを選ぶことが大切です。

材料、拘束、荷重、メッシュを設定したうえで解析を実行しました。

上図の平均ミーゼス応力の表示では、穴の周辺に、周囲より応力が高い領域が見られます。表示されている結果は「平均ミーゼス応力」で、単位はMPaです。ミーゼス応力は、複雑な応力状態をひとつの値で表し、延性金属などの降伏を評価する際に使われる指標です。画像では、穴の周辺の一部が赤色や黄色になっており、周囲より応力が高い領域を確認できます。

凡例の上端は約26.3MPaですが、この数値と色だけで「壊れない」「安全」と判断することはできません。材料、力の大きさや方向、固定の仕方、メッシュの細かさなどによって結果が変わるためです。

YouTubeに今回の作業の様子を動画で公開していますので、ぜひ、ご覧ください。

おわりに

今回は、ZW3Dで線形静解析を試した内容と、解析エンジン、技術開発・買収の背景を整理しました。形状を作るOverdrive、物理現象を計算するソルバー、解析の準備や結果表示を担う前後処理には、それぞれ役割があります。ZWSOFTはCAEの研究開発を進めるとともに、CHAM買収によってPHOENICSの熱流体解析技術を取り込み、扱う分野を広げてきました。

今回の線形静解析は、構造解析を実際に使ってみました。今後は条件や形状を変えた比較にも取り組み、結果をどのように設計の判断へつなげられるかを学んでいきたいと思います!

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